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2010年11月 6日 (土)

「人間失格」-生田君が美しすぎて-

太宰治の「人間失格」を読んだ時に思い浮かべた風景と、この映画で描かれているそれとが、不思議と一致するシーンがいくつかあった。

一つは有名な「トラ・コメ」のシーン。主人公の葉蔵と堀木(伊勢谷友介が、本当に嫌な奴を演じている。うまい。ずるい堀木になりきっている!)が、いろいろな言葉を「トラ(悲劇名詞」)か「コメ(喜劇名詞)」に分ける遊びをするシーンである。原作では悲劇、喜劇の言葉当てのほかに、アントニム、シノニムごっこもする長いシーンだが、映画では「『悪』と『罪』とは?」といったことをさらっと話しているうちに「ソラマメ事件」へ突入する。葉蔵と堀木が、原作ではアパート屋上で焼酎を飲むのだが、映画では家の上の方のフロアの窓際で飲む設定だった。その、窓際の夕暮れの空の映像、そして、ヨシ子が「ソラマメ事件」の被害にあっているのを、にやりとして目撃し、助けもせず葉蔵のもとへ戻った堀木の行動の描き方は、私が原作を読んでいて想像した風景と全く同じだった。

太宰の書き方には、読者に映像を簡単に想像させるうまさがあるからなのかもしれない。

もうひとつ、葉蔵がモルヒネ中毒になり、夜遅く薬屋のドアを乱暴にたたき、女主人にいきなりキスをしてモルヒネを出せと懇願するシーンも、原作を読んだ時の想像とほぼ同じだった。室井滋さん、色っぽかった。

この映画の中の、女性はみんな妙に色っぽい。室井さんもそうだし、ヨシ子の石原さとみもすごかった。石原は「ソラマメ事件」の後、ふらふらしながら茹でたソラマメをお皿いっぱいに乗せて階段を上がってきて、うつろな目で立ちすくんでいるシーン、すごかった。もちろんバーのマダム、大楠道代も、「ツィゴイネルワイゼン」から30年たっているのに、相も変わらず色っぽいまま。こういう美しい60代の女優さんを見ていると、どうやったら美しく歳をとれるか、真剣にそろそろ考えんといかんな、と強く感じる。もう、手遅れか・・・?

ただ、原作の中の葉蔵のイメージよりも、生田斗真君が美しすぎて、日本の話というより、アブサン崇拝者のアルチュール・ランボーの伝記みたいに、ときどき見えてしまった。特に、ラスト近くの三田佳子演じる鉄(原作では「テツ」)と海辺で貝殻で遊んでいるシーン。三田の爽やかなワンピース姿も手伝って、まるでフランス、ドーヴィルかどこかの海岸にしか見えない。生田斗真君、恐るべし。

生まれてから読んだ本の中で、一番読み返し率が高い小説の映画化なので、いくらジャニーズのアイドルが主演だと言っても、見ないわけにはいかない、とそれほど期待せずに見たのだが、十分満足した。よく考えたら荒戸源次郎監督だもの。満足いかないわけは、ない。

圭子

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