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2011年1月15日 (土)

「ハート・ロッカー」-別れた男への一番の復讐は、輝いている自分を見せつけること-

軍隊がテーマの映画を普段はあまり見ないが、去年のアカデミー賞授賞式のときのキャスリン・ビグロー監督があまりに恰好よかったので、とうとう「ハート・ロッカー」を見た。

アメリカ軍のイラクでの様子を描いているが、この軍隊は「戦い」を目的にしているのではなく、現地の爆弾を解体して、イラクの人を「守る」ことをミッションにしている。このような、少し変わった視点のテーマを描くあたり、頭のいい女性監督ならでは、と思った。

そして、普通の戦争映画よりも、ディテールが細かいことも、繊細な女性ならではのうまい仕事だと思った(あまり女性ばかり褒めると男性に怒られるかもしれないが、私は女性なので、できの良い女性には、弱いのである・・・)。たとえば、軍の洗面所が以外と清潔な点、そして軍の居住地の各隊員の部屋が案外快適そうで、スペースも日本のビジネスホテルのシングルルーム並みにあり、かつ「個室」であることも、「ああ、意外と普通の環境なんだ~」と見る者に教えてくれる。このような軍の内部のディテールを劇中で丁寧に描くのも、女性的だと思った。細かいディテールを描くシーンは他にもある。死んだ仲間の兵士が持っている武器(銃の弾)を緊急事態に使う必要があった際、その弾が死んだ兵士の血液によって固まってしまっている。弾と弾をバラバラにするために、くっついた部分を唾液で溶かすようなシーン、これはストーリーにはあまり必要ないかもしれないのだが、結構時間をかけて「スペシャリスト」と呼ばれる技術兵が唾をつけながら弾の準備をしていたシーンは忘れられない。焦りながら急いで、唾を出しては弾を磨く彼の顔はストレスと不安に満ちていた。このような焦りや不安は普通に生きている私たちにも発生する。上司やクライアントにある時間までに書類を提出しないといけない時に、デッドラインの時刻を過ぎそうになり、時計の音すら聞こえてきそうな焦り・・・そういうシチュエーションに私たちは彼のような表情をするだろう。イラクのバグダッドが舞台だろうとなかろうと発生しうる心の焦りや追い立てられることのストレスを描くことにより、社会的に不安定な海の向こうのことが、まるで自分の日常のように思えるほどにリアルに感じた。

この監督は、昔ジェームズ・キャメロンの奥さんだったらしい。ビグローと離婚した後のキャメロン監督は、自作の「ターミネーター」シリーズでサラ・コナー役を演じていたリンダ・ハミルトンと再婚している。ここからは私の全くの個人的な考え・推測だが、同業者(同じ映画監督同士)として、別れた男にアカデミー賞で今回勝ったこと(監督賞受賞)、そして、50代の後半だということが信じられないほどの美しさとスタイルの良さを見せつけた彼女は「どう?私こんなに輝いているでしょ?私と別れたこと、今少し『しくじったかな』と思ってない?遅いわよ・・・ハッハッハ!」と心でほんの少し思ったに違いない。全くの憶測ではあるが・・・

「ハート・ロッカー」の中で、やけにレイフ・ファインズに似たおっさんが出ているな、と見ていたら、なんと本物のレイフ・ファインズだった。エンドロールで俳優名を見て驚いた。キャスリン・ビグロー監督作品の「Strange Days」というレイフ・ファインズ主演の映画がある。ものすごくクールな1995年のSF作品だが、キャメロンとの離婚後の作品であり、キャメロンがプロデューサー・脚本家として名を連ねている。別れても「戦友」であるなんて、男らしい、「二人」だ。

圭子

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