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2011年5月11日 (水)

「わたしを離さないで」-Baby, never let me go...-

原作はとてもとても不思議な話だ。臓器提供者になるべく生み出されたクローン人間の物語。SF的題材だが、舞台は少し前(70年代から90年代)のイギリスなので、懐かしい匂いも漂う。

作者カズオ・イシグロがエグゼクティブプロデューサーに名を連ねているだけあり、原作をかなり忠実に描いている。中には本を読んでいて思い浮かべた風景と同じような場面がいくつもあった。ひとつは、トミーとキャシーがマダムを訪ねに行く場面の前のシーンだ。事前にキャシーがひとりで場所のチェックに行く場面。この場面はなぜか頭で思い浮かべたシーンと同じような雰囲気だった。

キャシー役のキャリー・マリガンは、赤ちゃんのようなふんわりした頬をしていて、一見妖精のような甘い声をしていそうなのだが、実はしっかり落ち着いた低めの声で、そのギャップがよい。彼女のナレーションがバックに流れ、彼女自体はなにも話さず黙っている、というシーンが多い。こういうシーンははっきり言ってごまかしがきかないだろうし、下手するとスクリーン越しで見ている客たちになにも心情が伝わらない危険性もある、演技力のない人だったら。しかしマリガンの場合、全ての「裏にナレーション+本人は無言」のシーンで、私たちの心をこれでもかとかき乱す。あっぱれ、赤ちゃんほっぺ。

ルースを演じるキーラ・ナイトレイは、「この人こんな顔だっけ?こんな顔の彼女見たことない」と衝撃を受けるほどの役作り。これまたあっぱれ、だ。本来かなり魅力的な人だから、これは覚悟をきめて演じたはずだ。ずっと、心のゆがんだ意地悪キャラ(心もゆがむであろう、この境遇は。)だが、最後にどんでん返しで涙を誘う。貴族の役も、海賊と一緒に戦うおてんば役も、ジェーン・オースティンものも、なんでもこなしてきたが、今回のような屈折系キャラも今後見てみたい。

トミー役のアンドリュー・ガーフィールドに関しては、アメリカ人なのにこんなにイギリス風英語を話していて、あっぱれ、と思って調べたら、アメリカとイギリスの二重国籍で、イギリス育ちだそうだ。彼の「帰り道の叫び」シーンも、原作からの印象のままだ。ほとんどデジャブ。この叫びシーンからエンドロールまでずっと泣いてしまった。

長い、短い、の差はあれ、いつか私たちの人生は「コンプリート」する。命が無限だと思うと、大好きな人と出会えたり、一緒に笑ったりする経験をもてることが希有な幸福なのだと気づかないまま終わってしてしまうのではないだろうか。SF的な、非現実的な題材を選びつつ、この究極かつシンプルなメッセージを伝えたかったのではないだろうか、作者は。

ちなみにキャシーの子供時代を演じる子役がはっきり言ってキャリー・マリガン本人を元にしたCGかと思うようなそっくりさだった。キャリー・マリガンのクローンか!?可愛くて可愛くて、見ているだけで、泣けてくるほどの愛らしさだった。

圭子

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