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2011年7月10日 (日)

「バッド・エデュケーション」-色の嵐-

プールサイドのチェアーの赤、バスタオルの緑、ライターのオレンジ色、シャツの薄ラベンダー色・・・ 鮮やかな色の嵐だ。原色の美しい色をこれでもか、と取り入れつつ、それらが見事に調和している。アルモドバルの美的センスにはいつも感動させられる。

エンリケはスランプに陥っている若き映画監督だ。美しいフェレ・マルティネスがミステリアスに演じる。彼のオフィスの装飾がまたカラフルで驚く。黄色い壁、ブルーのドア、デスクの上のペン立てにささる何色もの色鉛筆。単にたくさんの色を無差別に使用しているのではなく、考え抜いた組み合わせなのだ。ピンクとラベンダーを混ぜたような色のシャツを着るエンリケ。突然彼を訪れる「アンヘル」と名乗るエンリケの幼馴染(と自称する)男。そんな突然の訪問者と共に飲むコーヒーのマグのオレンジ色。私達も生活にもっと美しく色を使わないと・・・と、反省させられるほどだ。

本作には、「劇中映画」のシーン、現在のシーン、過去のシーンが明確にボーダーを示さずに現れる。ガエル・ガルシア・ベルナル演じる謎の男は劇中映画ではドラッグクィーン(かつらをかぶり、化粧をしているガエル・ガルシア・ベルナルがどことなくジュリエット・ルイスに似ている・・・)のイグナシオ(芸名「サハラ」)、現代のシーンでは「アンヘル」と名前を変えた、エンリケの寄宿舎時代の友達イグナシオ、過去のシーンでは兄であるイグナシオを「利用」している弟フアンの役だ。書いているだけでも複雑なこの様々な役割を、別人のように演じるガエル・ガルシア・ベルナル。芸達者だ。おまけに彼はメキシコ人だが、今回スペイン映画に出ている。才能のある人だ。

(ちなみに劇中劇でサハラのドラッグクィーン仲間パキートを演じるハビエル・カマラのしぐさのかわいらしさに驚愕する。彼はなんと「トーク・トゥ・ハー」のベニグノ役の俳優だ!)

先日見た「マグダレンの祈り」もそうだが、カソリックの神父が修道院なり寄宿舎の若者をおもちゃにする世界は映画では頻繁に描かれている。これだけ取り上げられるということは、決してフィクションの世界だけに存在するのではないのだろう。劇中劇では、少年イグナシオは、愛する友達エンリケを守るために、神父に身を任せる、という悲しいエピソードが描かれる。

アルモドバルの映画は、人生の悲哀を描きつつも、描き方が派手だからか、見た後に落ち込んだりはしない。原色の色たちが、どんなに悲惨な人生にも色鮮やかな力を与えるからであろうか。

圭子

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