« 土用の丑の日のフライングディナー | トップページ | ベランダのバジルでジェノベーゼを作ってみましたディナー »

2011年7月16日 (土)

「アタメ私をしばって!」-ラストはほのぼの。途中はサスペンス-

簡単に説明すると、ストーカー男に監禁されているうちに、その男を好きになってしまった女の話。だが、アルモドバルの美しい「色」のオーケストラあり、一風変わった登場人物あり、で、見どころ満載。暑い夏を乗り切るには、スペイン映画に決まり!

ポルノ女優マリーナを愛する、精神病院から出てきたばかりの若い男リッキーは、彼女に「自分を愛してもらう」ためにそれはそれは、頑張る。彼女の家に入り込み、彼女をベッドに縛り付ける・・・ マリーナとは過去に一回会ったことがあるだけだが、彼女と結婚し、家庭を持つことを勝手に心に決めているリッキーである。

しかし、単なるストーカーの話では、ない。リッキーは本気でマリーナを愛しているし、そんな彼にマリーナもだんだん惹かれていく。途中からは「監禁生活」というより新婚さんカップルみたいに、マリーナがご飯を用意したらリッキーがテーブルを用意する、とか、マリーナの歯が痛みだしたら、リッキーが外に薬を買いに行く、とか・・・ どんどん仲良しさんになっていく。

マリーナを演じるのがビクトリア・アブリルなのだが、本作での彼女は、ちょうど「化身」の頃の黒木瞳のような雰囲気だ。そして、とんでもなく若いアントニオ・バンデラスが怪しくも天然なリッキーを可愛く演じる。近年英語を話すバンデラスばかり見てきたが、スペイン語を話しているのを見ると、新鮮に感じた。このように、俳優は母国語で話している時が一番かっこいい、と私は思う。たとえば、ペネロペ・クルスも英語を話していると、なんとなくラテンなまりの英語で「コケティッシュさ」が強く出すぎて、実はあまり好きではないのだが「ボルベール<帰郷>」を見たとき、初めて「この人、好きや!なんや、いい人やん!?」と感じた。話す言語で性格や雰囲気が全く別に見える。(逆に、ジュリー・デルピーの場合は、フランス語の時より英語の時の方がさばさばして見える。私の個人的な感じ方、だが。)

マリーナのお姉さんが、非常にいい味を出していて、人間的にも「こういう人、頼りになるな・・・ 家族に一人、会社に一人こういう人がいるといいな」という肝っ玉系。ぽっちゃり目なのに、ぴちぴちのボディコンワンピースを着ていたり、トイレに入るシーンでも開けっぴろげな感じだし、彼女のシーンは全て人間臭さに溢れている。

同様なテーマを扱った1965年の映画「コレクター」(テレンス・スタンプ最高)では、後味の悪いラストの車のシーンがあるが、本作のラストの車内のほのぼのした世界は、恐ろしいほどの「平和感」に満ち溢れている。「いや、絶対最後に大どんでん返しがあるはず!リッキーがまた紐をカバンから出して、今度はお姉さんを縛る、とか、急に車が爆発して皆死ぬ、とか・・・」と期待したのだが、あっけなく、平和に、すっきりと、映画は幕を閉じる。

単純に生きたい、と強く思った。何もくよくよ考えず、好きな人を愛し、幸せを求めることが一番大事で、それ以外は皆、些細なこと。そういう当たり前なことを再確認できる、珠玉のラブストーリーだった。この映画は1990年の作品だが、当時学生だったとき見る機会がなかった。遅ればせながら、出会えてよかった作品である。Almodóvar is a god!

圭子

|

« 土用の丑の日のフライングディナー | トップページ | ベランダのバジルでジェノベーゼを作ってみましたディナー »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「アタメ私をしばって!」-ラストはほのぼの。途中はサスペンス-:

« 土用の丑の日のフライングディナー | トップページ | ベランダのバジルでジェノベーゼを作ってみましたディナー »