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2011年9月19日 (月)

「アラビアのロレンス」-可能なら、映画館で見たい-

恐ろしいほど、どこまでも続く砂漠の中、ラクダに乗ってゆっくりと進むロレンス。小さな液晶テレビでDVDで見ても感動するが、可能なら大きなスクリーンで見た方が絶対によい作品だ。

T.E.ロレンスは、第一次世界大戦中、トルコの圧政からアラブを解放するべく、イギリス軍から派遣される。慣れない砂漠の生活で、ロレンスばかりがかなり「しんどい」役目を背負うことになる。過酷だ。水も限られた量しか飲めないし、アラブの人たちの信頼を得るようになるまでも時間がかかる。もともとロレンスはオックスフォード大学ジーザス・コレッジ出身。実際の身長は165センチだったとのこと。決して映画の中のような、ゲリラ戦、ラクダで走り回る、などのアクティブなことが得意なキャラクターではなかったはず。過酷だな、と、見ていてかなり同情してしまうシーンもある。

それに比べ、カイロのイギリス軍のメンバーの、「他人ごと」状態と言ったら、腹立たしいほど。バーで酒を飲み、庭ではチェスをして、快適な生活をしている。ロレンスに、七面倒くさいことを全部任せて、「ああ、早く母国に帰って温泉でも入りたいな」的な発言をしている。そんな彼らを見ていて、さらにロレンスに同情してしまう。報われないな、と。

映画の前半は、徐々にアラブの部族たちの信頼を得ていき、英雄的存在になっていく、「上向き」のロレンスを楽しむことができる。かなりしんどい立場であるし、できればカイロに戻って楽な状態で働けたら、と何度も考えただろうが、責任感の強い彼は、周りのアラブ人たちの好意的な態度にだんだん気持ちよくなっていき、「俺がやらないで誰がやる」といった精神になっていく。だが、後半は、結局イギリス軍側に自分は利用されてたんだ、ああ、むなしい、という挫折感もひしひしと味わっているロレンス、トルコ軍につかまって、(暗示的シーンだが)レイプされてしまうロレンス(その後彼は人が変わったようになる)、頭がちょっとおかしくなったように、がんがん人を撃つロレンス、といった、「下向き」のロレンスを目の当たりにすることになる。

映像、音楽ともに、完ぺきすぎるほど完ぺき。しかし、ロレンスの姿はまるで、会社でいやなことを要領のいい人に押し付けられ、逃げたくなるけど、責任感が強くて、断りきれず、無理して無理してこなして、最終的にうつ病などの病気になってしまい、過労死してしまったり、社会からはみだしてしまったりするシチュエーションも多々ある、現代ストレス社会を生きる私たちのようにも、見えてしまうところが悲しい。いつの世も、まじめな人間は損するのか。やってられない!

ピーター・オトゥール(本当のロレンスは小柄だったようだが、オトゥールはかなりの長身)は、当時約30歳。ほぼ、新人のころの映画である。「ロード・ジム」の時も感じたが、オトゥール目つきは、かなりミステリアスだ。1962年作品。こういう過酷な映画(演じる側も、撮影する側も)は、今後も作られないだろう。

圭子

追記:

伊丹十三の「女たちよ!」によると、「アラビアのロレンス」の冒頭の、ロレンスのバイクシーン、スタントなしでオトゥール自身が演じたそうで、その理由から「撮影最後の日」に撮影されたとのこと。監督のデヴィッド・リーンは、かなり非情な人だったそうだ・・・

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