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2011年10月14日 (金)

「陽炎座」-夢の中のできごと-

大正時代。新派の劇作家松崎(松田優作)は、謎めいた女品子(大楠道代)と出会う。品子は出会ったときからまるで夢の中の人物のように、不思議なオーラをまき散らしている・・・

忘れられない風景をいくつも見た。この映画は、「夢」の中の世界のようだ。

中村嘉葎雄演じる松崎のパトロン玉脇。彼はある意味本作の「主役」のような力強い印象を私たちに与える。怪演の主演松田優作も、ジャック・スパロウ的破天荒さの原田芳雄もかっこいいが、やはり何が怖いって、いつもニコニコしているけど目が笑ってない嘉葎雄が一番怖い。彼がずどんずどん猟銃を撃っている場面(松崎が撃たれやしないか心配だった!)は狂気満点でグー。

そして、30代半ばのころの大楠道代。存在しているだけで、奇跡のような、女優。浄瑠璃の人形のように無表情に踊る長いシーンから、舞台崩壊の場面まで、突っ走る大楠。水の中に沈んで鬼灯を口からぴゅっと出したと思ったら、股間から数えられないほどの鬼灯がこれでもか、これでもかと浮かび上がり、水面をどひゃああっと埋め尽くす、恐ろしくも美しいシーン。あれだけ長い時間水の中で目を開け続けている大楠。これは、夢だ、絶対夢だ!と幸せな気分になる・・・大楠道代を見ていると、現実の面倒くささがどうでもよくなる。涼しい顔して生きて行こうじゃないか、という気分にさせてくれる、珍しい女優だ。

黒柳徹子のような髪型をして、若いころのバルドー(そして、今の「関根麻里」と似てなくもない)のような小悪魔的加賀まりこもまた、夢のような存在だった。「鳥を売る」彼女の家の軒先にはたくさんの鳥かごがかかっている。その異様な風景につげ義春の「ねじ式」のような匂いを感じた。あの、目医者の看板ばかりが目立つ村のシーンを思い出したのだ。ベランダにさりげなく干している黒いストッキングが、コケティッシュさを強調させている。

「わけわからないけど好き」な映画はほかにもある。自分が生きる「現実」が、わけがわかり過ぎてつらいとき、夢のように、辻褄が合わない、何通りにも考えられる、シュールな映画を見るのが好きだ。

①「ツィゴイネルワイゼン」(清順作品。桃をじょぱじょぱ貪る大楠道代、最高。)
②「8 1/2」(「アサ・ニシ・マサ」のあたり最高。)
③「マルホランド・ドライブ」(これは何度も見れば意味がだんだんわかってくるが、それでも強烈な異常シーンが満載でグー。今も、ナオミ・ワッツを見るたびに落ち込む気分になるのはこの映画のおかげ・・・)
④「ドリーマーズ」(エヴァ・グリーン演じるイザベルと、ルイ・ガレル演じる弟テオ。双子だが恋人のような二人。ときどきものすごく怖い顔をするエヴァ・グリーンに注目。これだからフランスの娘は怖い。こういう怖くてきれいな悪女は日本の美人が百人かかって対戦してもかなわないのだ。普通ではない物語。エッフェル塔を降下する映像とともに、唸るジミヘンを聞く、至極のオープニングシーン。)

泉鏡花の原作は読んでいないので、本作で描かれている内容を「きちんと理解したか否か」と言えば、全く理解していないと言っても過言ではない。ただ、ときには「意味」なんて求めず、映像の美しさに酔えばいいじゃないか、と思うのだ。「陽炎座」。夢を見ているような2時間あまりの快楽。清順イズ・ザ・ベスト。

圭子

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