« 野菜中心ヘルシーディナー | トップページ | 和食でしんみりディナー »

2011年10月10日 (月)

「Ricky リッキー」-鶏の手羽先が、今後食べづらい・・・-

オゾン監督の2009年作品。赤ちゃんの愛らしいジャケットに、前評判やあらすじなどの前知識ゼロでレンタルしたら、まったく想定外のノリの映画で、かなり衝撃を受けた。

何もかもが、想定外。まず赤ちゃん映画によくあるような愛らしさ、キュートさは全くない。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を思わせる、工場で働くシングルマザーのカティ。小学校に通う娘と二人暮らしの彼女は、郊外の、低所得者が住んでいそうな集合住宅で暮らしている。いわゆるパリのおしゃれなアパルトマンのように、ベランダからエッフェル塔が見えるような、ラブリーな「おフランス映画」ではない。色気のないバスルームで身支度を整え、娘をバイクの後ろに乗せて学校まで送り、自分もその後工場へ向かい、仕事が終われば娘をピックアップに学校に戻り・・・という生活の繰り返しだ。疲れ切って髪をふり乱したカティの姿、そんな母親にいつも気を使っている感のある娘リザのやり取りを見ていると、ダルデンヌ兄弟の「ロゼッタ」を思い出した。そして、本作も、もしかしてフランスが舞台ではなく、寒いベルギーが舞台なのかも、と思うほど、私たちが「フランス映画」に通常期待するような風景からかけ離れた雰囲気だ。

疲れた母親であるのと同時に、「女」であることも捨ててはいないカティは、工場の新入りの外国人パコに目をつけ、出会ったその日に職場のトイレでの情事。その後、カティとパコの中は親密になっていき、娘のリザとともに、三人で暮らすようになる。

「外国人」として、立場が弱い男がフランス人である女性と暮らすことで、自分の立場を上げる。シングルマザーで孤独な女性が、男と一緒に住むことで、自分の生活の品質を上げる。そんな母、そして母の「新しい男」との新しい生活に、気を使いながらも自分を順応させていく娘。ここには、丸々太ったかわいい赤ちゃんがジャケットの映画が私たちに想像させる、甘いミルクのにおいがするようなストーリーはない。オゾン監督は、「これが不況や移民問題でいっぱいのフランスの現実だ!」と言いたいのだろうか・・・

カティとパコの間に生まれた赤ちゃんはリッキーと名付けられたが、次第に背中に翼のようなものが生えてくる。そこにハリウッド的なBGM付のラブリーな演出はなく、メジャーで羽の長さを日々図って「伸びてきたわね・・・」と深刻な顔をするカティを淡々と描くオゾン。羽の生えたリッキーは天使のように飛んで行ってしまうが、最後の最後まで、「この映画、どう落とし前つける気なんだ?」とどきどきして見続けた。単に、「いろいろあったけど、最後は4人(カティ、パコ、リザ、カティのおなかの赤ちゃん)でうまくいきました」で終わるとも思えない。そこはオゾン監督だし、冒頭のカティの「福祉の人」への涙の相談シーンが、どうその後の世界と結びつくのかを分析する必要があるだろう・・・

リザ役の子役女優、Mélusine Mayance は1999年生まれとのこと。すでに、本作では時に「女」の表情をしていた。アンファン・テリブル!もう5年もすれば、「汚れた血」のころのジュリー・デルピーみたいな演技をしてしまうのであろう。フランス女には、かなわない・・・

先日、雰囲気のよい焼き鳥屋さんに行って、おいしい焼き鳥を楽しんだばかりなのだが、本作を見て、今後ちょっと「手羽先」に関しては、躊躇してしまいそうな予感・・・

圭子

|

« 野菜中心ヘルシーディナー | トップページ | 和食でしんみりディナー »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「Ricky リッキー」-鶏の手羽先が、今後食べづらい・・・-:

« 野菜中心ヘルシーディナー | トップページ | 和食でしんみりディナー »