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2011年10月30日 (日)

「ブルックリン最終出口」-出口のない人たちの物語。哀しい"The best tits in the Western world."-

1989年作品。原作は、ヒューバート・セルビー・ジュニアの同名小説。(著者は本作でカメオ出現している。タクシー運転手役で。同じようにヒューバート・セルビー・ジュニアは「レクイエム・・・」でも看守役で出演している。)

1950年代ブルックリン、ニューヨーク。町のギャンググループ。ストライキで会社と戦う組合員。娼婦。差別を受けるゲイ。皆、逃げ場がない世界で生きている。毎日、絶望的。

複数の人間関係グループが描かれている。グループに共通しているのは、掃き溜めのようなブルックリンの荒れた社会から逃げることなく生きていることだ。

①工場の労働組合ストのリーダー的存在のハリー(嫁と赤ちゃんがいる)と、ストメンバーとの関係、そしてハリーの「ゲイの恋人」レジーナとの関係。

②チンピラのヴィニーとそのギャング仲間(メンバーには今をときめくサム・ロックウェルもいる!)、そしてヴィニーを慕うゲイのジョージェット(アレクシス・アークエット!お姉さんはロザンナ・アークエット!)。

③ ②のチンピラグループにときに利用される立場を持つ娼婦トララ(ジェニファー・ジェイソン・リー)、そしてトララを聖母マリアのように憧れる少年スプーク。

④スプークの実家。割とまともな家庭。妊娠した姉ドナ、責任を持ってドナと結婚するトミー。ドナとスプークの親。

⑤娼婦トララが「カモ」としてひっかけた将校スティーブと、数日間だけ結ぶ「普通の恋人」のような関係。

④の世界が描かれるシーンはコミカルであり、希望も存在する。赤ちゃんのパワーってのはすごい。掃き溜め地獄ブルックリンの中、④のシーンだけは明るく照らされている。上記ほとんどの世界で閉鎖的な空気が流れるが、④にはそのような雰囲気はほぼ、ない。赤ちゃんの洗礼のシーンでは、マーク・ノップラー作の美しいテーマ曲が、教会音楽のようなアレンジで流れる。

ノップラーの、この同じ曲が、トララが⑤の関係が終わり酒におぼれているシーンでは地獄のテーマ曲のようにアレンジされて流れる。マーク・ノップラー、天才か?テーマ曲は随所で様々なアレンジで流れる。(Dire Straitsの「Money For Nothing」も名曲だったな・・・)

地獄のような暗いブルックリンだが、スプークが天使のように私たち見る者の精神を救う。彼の存在がもしなければ、この映画を見終わった後の幸福感はまずないだろう。ストが解除され、また労働する喜びに満ちた男たちの笑顔にも感動する。が、しかし、私はその朝の光に満ちたラストよりも、数え切れない男たちに何度も無惨にレイプ(「合意」、とは言え、血まみれになったトララを見れば、それが強姦だったことは明らかだ)され、それでも脳裏で自分を「普通のガールフレンド」として扱ったスティーブからの手紙の言葉を反芻し、人生を捨てたトララに、自分の服を脱いでかけてあげるスプークに、この映画の美しい「落とし前」を見た。

自分のために涙を流す人が、この、出口のない世界にもひとりだけいる。この映画は、見た後一生癒えない傷を心に残す、痛い映画だ。しかし同時に映画とは、見るものに、生きる望みを与えることができる媒体だということも、再確認できる。

絶望的な毎日の中にも時々光が見える。だから、生きることができる。50年代のブルックリンの掃き溜めのような社会で生きるトララたちと、21世紀のクリーンな社会で生きる私たちも、根本は同じなのだ。基本的に、毎日は地獄だ。しかし、スプークがトララのために涙を流すように、生きていればたまには光を見ることができる。

それにしても、ジェニファー・ジェイソン・リー。あなたは恐ろしい女優だ。トララ(Tralala) という、究極の「一人ぼっちの女」(彼女に、「親」「家族」「友だち」という背景がまったく見えない。生まれたときから一人ぼっちだったかのような匂いを感じる)を演じている。性的に実の父親に傷つけられた過去を持つ役を「黙秘」で演じた時も思ったが、この人、時々ものすごく「痛い」顔をする。本当に不幸な顔をする。メソッド俳優、とのこと。ジェニファー・ジェイソン・リーが出ているなら、どんな映画でも見たい。そう思わせる女優だ。

圭子

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