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2012年2月10日 (金)

「ブルーバレンタイン」-よくある日常の恐怖-

恋愛のスタート時の楽しくも暖かいフェーズと、倦怠感たっぷりの救いようのないブルーなフェーズが交差する「ブルーバレンタイン」。バレンタインデー直前のこの季節に本作を拝見し、仲良く結婚を続けられる夫婦も、(本作の夫婦のように)最悪な結末に終わる夫婦も、そんなに差がないのかもしれない、と感じた。

ライアン・ゴズリング演じるディーンと、ミシェル・ウィリアムズ演じるシンディ。若いが、疲れきった夫婦だ。小さな娘フランキーと三人で、あまり裕福そうではないライフスタイルをおくる。

ディーンは朝から酒を飲み、仕事はペンキ塗り。病院で看護師の仕事をするシンディが大黒柱であることが見受けられる。

二人の見るも無惨な現在の姿と並行して、若く、向こう見ずで、愛にあふれた幸せな頃の二人も描かれる。これが、つらいのだ。見た目だけではなく、希望にみちて、気持ちそのものが鮮やかに若い二人。今や前髪の生え際は後退し、部屋の中でも色眼鏡をかけている酔っ払いのディーン。シンディもシンディで、若いころは医者になることを夢見る勉強のできる学生だったが、現在は娘の朝ごはんを調理する気持ちの余裕もない、疲れた女だ。(ほぼすっぴんに見えるウィリアムズが恐ろしいほどにリアル。)美しい過去と、救いようのない現在が交互に表現され、見るものに疑似体験をさせるのだ。(「ああ、昔は私も輝いていた。ああ、昔はこの人も輝いていた。」と。)

恋が始まるキラキラした感覚を、一生保つことができたらどんなに世界はバラ色になるだろう。しかし、現実は、そうはいかない。激しい熱情も、よくもってせいぜい2ヶ月だろう。その後に続く恐ろしくも長い「日常」の中に「愛」という安らぎが見つけられたら、それはそれは幸せなことだ。「もうあなたには我慢できない!」というみもふたもない結末を迎えてしまうことなんて、なにも珍しいことではない。紙一重なのだ。ディーンは別に、家族に暴力をふるうような極悪人でもない。シンディも、堅気の仕事につき、家族のためにけなげに働いている。うまくやれば、今後もうまくいくはずだったのだ。うまくいく夫婦も、いかない夫婦も、当事者たちの行動、生き方に大きな差はないのではないだろうか。私たちすべてが、本作の二人になり得る。とても現実的だ。あり得そうな世界なので、恐怖を感じるのだ。

本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされたウィリアムズ。表情がすごくよかった。若いころと現在を演じ分けている。体重も、アップさせていると思われる。現在のシーンではややたるんだ体で人生の希望を失いかけた悲しい女を好演している。

圭子

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