« 卵を買った翌日の定番朝ごはん | トップページ | 硬い肉もマリネで柔らかディナー »

2012年5月 4日 (金)

「阪急電車 片道15分の奇跡」-ホームの接近メロディーに涙-

阪急電車は、あずき色をしている。この色にずっと守られていた。学生のころから社会人になって勤め人をしていた計10年ほど、阪急沿線に住んでいた。大学は箕面の山奥。なので、一番近い阪急の駅は北千里。そのあと仕事をするようになって池田市にある石橋駅、そして西宮北口駅、といろいろな沿線に住んだが、いつも、阪急電車と縁が切れない10年だった。阪急でないと不安だったのだ。阪急のあずき色の電車で生活することが、自分の中でデフォルトになっていた。駅のホームのメロディ(特に、接近メロディーの「ちゃらちゃちゃちゃちゃ!」)も大好きだった。

同じくらいまとまった長い時間を、東急田園都市線沿線で過ごしたことがあるが、あの、阪急時代に得た「帰属感」はついぞ感じることはなかった。東京の人は別の感覚を持つかもしれないが、なんなんだろう。やはり「あずき色」で青春時代を濃くすごしたからか、銀色の車体に温かみを感じられなかったのか。

そんな阪急電車の中でも、今津線は、ユニークだ。西宮北口(西北)から宝塚までの計8駅を結ぶ短い線。この路線は関学(関西学院大学)があったり、神戸女学院大学があったり、他にも中学高校もわりとある場所なので、当時学校営業をしていた私はよく使用した。西北に住んでいたから、直行直帰できる日は帰りにかわいい喫茶店でお茶をして帰ったり、リラックスした気分にさせてくれた。思い出は遠くになると、いいことだけが残るからよい。今津線から思い出すことは、門戸厄神のマンションに住む友達の家で生まれて初めて食べた生ハムの味、学生時代のデートで「宝塚ファミリーランド」の動物園に行ったこと、西北のマンションの目の前の阪急西宮スタジアム(今はもう別の施設になっているとのこと)でglobeのコンサートがあった時、あまりに近いのでベランダから丸聞こえで、得をした気持ちでビール飲みながら音だけ聞いていたこと。西北の駅前のクリーニング屋さんで、なぜかしょっちゅう野菜をおすそ分けしてもらったこと・・・ 

本作「阪急電車」は、そんなユニークな今津線の中で起こる奇跡が描かれる。偶然電車で出会っただけの人たちが、一瞬の語らいの中で、人生をやり直せるほどの影響を受けたり、涙を止める方法を知ったりする。知らない人と電車で話すこともあまり起こらないし、ましてはどん底になった気分を上へ持ち直すすべなんて、そう簡単には学べない。しかしこの映画を見ると、中谷美紀ではないが「悪くないよね、この世界も」と本当に思えるのだ。心がしぼんでしまったような日に見ると、再生できる。そんな物語だ。

それにしても宮本信子って人は、すごい人だな。それを確認できる映画だ。この人が主役と言ってもよい。閑静な住宅地の多い阪急神戸線とか今津線に、こういうおばあちゃん、いるよなああ。背筋よくて、上品で、凛としている。そういうおばあちゃんをクールに熱演。そして孫役芦田愛菜ちゃん。この人はネイティブの関西人なので、関西弁だと自然な感じですごくいい。宮本&芦田のコンビ、最強。

中谷美紀の「討ち入りシーン」は有川浩の原作を読んで想像したシーンとほぼ同一だった。男を寝取られた祥子。その男の披露宴に女神のようなエンパイアラインのウェディングドレスで挑む祥子。神のような中谷美紀にぴったりの役だ。大丈夫だよ、祥子。一生あの男はあなたの姿を忘れない。ことあるごとに、自分の失敗に後悔するはず。あとはあなたが幸せになる番だよ。

関西では、電車(やその他の場所)で知らない人に話しかけられることが多い。コミュニケーションを取る、ということを大事にしているのだと思う。もうだいぶ関西から離れているので、たまに行ったとき、電車の路線図を見上げて「え~っと、どうやって乗り換えるんだっけな」と考えていると、「どこ行くの?わかる?」と話しかけてくる人がいる。現役で住んでいたころも、慣れない場所に営業に行っているとき、地図を見て道路を見て「??」としていると、「場所さがしてるんですか?」と話しかけてくれる人がいる。そんな人々の周りで阪急電車が今日も「ちゃらちゃちゃちゃちゃ!」と接近メロディーを鳴らしてホームに到着する。人々の心を運びながら。

圭子

|

« 卵を買った翌日の定番朝ごはん | トップページ | 硬い肉もマリネで柔らかディナー »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「阪急電車 片道15分の奇跡」-ホームの接近メロディーに涙-:

« 卵を買った翌日の定番朝ごはん | トップページ | 硬い肉もマリネで柔らかディナー »