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2012年7月13日 (金)

「春との旅」V.S.「永遠の僕たち」-メメント・モリ-

死んだらどうなるんだろう。いや、それより、死ぬ前苦しむんだろうか。そんなことを時々考える。震災を機に「死」を考えることが多くなった人も多いのではないだろうか。

「春との旅」はおじいちゃんと孫娘のロード・ムービーだ。北海道の漁村の娘春(「梅ちゃん先生」で梅子の親友役を強い目力で演じる徳永えり)は学校での給食の仕事を失う。東京に出て仕事を探したくても足の不自由な祖父(仲代達矢、これまた目力強し)の世話をする人がいなくなる。二人は忠男を居候させてくれそうな親戚を巡る旅に出る。

北海道から宮城県に向かう二人。(終盤でまた、北海道に戻るが。)折り合いの悪かった兄弟(姉も)と対面しつつ、皆それぞれ事情があり、誰も忠男の面倒を見てくれるひとはいないことがわかる。そんな中、春は、「ずっとおじいちゃんと一緒にいよう」と静かに決意する。

本作では、震災前の東北の活気のある姿を見ることができる。春と忠男がおいしそうに食べる気仙沼のフカヒレラーメン。忠男の姉(淡路千景さん、今年亡くなったそうだ)が女将をする鳴子温泉の老舗旅館。JR仙台駅前の雑踏。このような「生活」を一瞬で奪った自然の恐ろしさを再度考える。

現代社会のいいところは、医学の発展により、昔は助からなかった病気も治り、人はものすごく長生きになったことだ。人生60年だったころには味わえないほど、たくさんの喜びを得ることができる。しかし、昔の人が味合わなかった苦悩を味わう機会も得てしまった。年を取り、体も不自由になり、自分一人では生きることもできず、唯一の身内である孫の将来をしばってしまうことになる忠男。でもそれは忠男のせいではない。「長く生きちゃってごめんね」という気分にさせるような社会なんて、おかしいのだ。おかしいが、今の社会(そして、今後はもっと高齢化が進む)で、人が気分よく死ねるようになるのは、無理な相談なんだろうか。足を引きずりながらも、それでも前を向いて歩く忠男の姿は、明日の自分だ、という気持ちがしてならない。

それにしても、「元漁師」に見えづらい仲代達矢だった。孫に甘えて少しお茶目なしぐさをしたり、わがままばかり言って「疲れた疲れた」と言う割には毎度毎度の食事を猛烈な食欲で米粒残さず食べる忠男を好演していたが、インテリ風のメガネ、そして明らかに仕立てのよいコート(オースチン・リードか?)を着ている彼は、まるで大学の教授だ!威厳がありすぎ。教授、もしくは「マクベス王」にしか、見えない・・・

同じく「死」を描く「永遠の僕たち」を見た。ガス・ヴァン・サント監督の最新作。

知らない人の葬式に紛れ込んで参加するのを趣味とする主人公イーノック。(演じる俳優が、なんか誰かに似てるなああ、とずっと思っていて、最後まで見て「デニス・ホッパーに捧ぐ」とあり、あああ!デニス・ホッパーだ!と思った。似てる似てる。苗字も「ホッパー」だし、調べたら、息子さんだった。)この設定、「ハロルドとモード」を思い出させる。まあ、他人の葬式に顔を出すなんて、普通では考えられない。そういう考えられないことをしないと生きていけないのだから、イーノックには何か過去があるはずだ。

そんな彼がある葬式で、かわいい女の子アナベルと出会う。(演じるミア・ワシコウスカがものすごくかわいいショートカットでよい。)彼女は余命3か月なのだ。

出会った時点で3か月という時間的制限がある。この3か月はとことん楽しもう、ということで、最初は友達だった二人はだんだん恋人になり、時に小さな喧嘩をしながらも、忘れられない思い出をたくさん作り、数えられないほどのキスをして、「死」を準備する。

イーノックはアナベルに出会うまでは、友だちは一人しかいなかった。「ヒロシ」という名前の幽霊だ。ヒロシは神風特高部隊のパイロットだった日本人。とっくに死んでいるが、イーノックにしか見えないという状態で、地上にいる。加瀬亮がきれいな英語をあやつり、イーノックの「心の友」を静かに演じる。

アナベルは病気であり、その病気がとても重いこともしっかりと自覚している。なので、残された短い時間を嘆き悲しむのではなく、好きな人とたくさん楽しい時間を過ごそうと努力をしている。私たちは、ほとんどの場合、「あと○○か月(○○年)で死ぬ」というタイムリミットを知らない。知らないので、無駄に人と争ったり、自分を苦しめたり、将来を不安に思ったりする。無駄な時間をかなり長いこと過ごした結果、何の準備もなく突然病気になってしまったり、時には、何の準備もなしに死んでしまうこともある。アナベルのように、腹をくくって「精神的な万全の準備」ができればいいんだけどな。死を恐れず、死を意識しつつ心を準備態勢に持っていく、そしてなるべく周囲の大事な人々とは楽しい時間を意識して過ごす、という方法を身に着けること。これがあと数十年の余生で行うアクションポイントの第一位にすべきことかもしれない、と強く感じた。

この映画はビートルズの「Two of Us」で始り、NICO の「The Fairest of the Seasons」で終わる。涙は出るが、決して悲しい映画では、ない。ガス・ヴァン・サント万歳。

圭子

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