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2012年7月 3日 (火)

「愛の残像」V.S.「ゲルマニウムの夜」-家族対決!-

渋谷シアターイメージフォーラムにて「愛の残像」を見てきたところ、である。雨の渋谷、平日夕方の渋谷。ゆったりした座席の中、まったりとモノクロのパリの中に忍び込んで、悲しくも美しい恋の世界を堪能できた。

ルイ・ガレルはフィレンツェ、ミケランジェロ広場のダビデ像を思い出させる。くるくるの巻き毛。美しい裸体。ベルトルッチの「ドリーマーズ」で披露した、後姿のお尻はダビデ像のお尻をほうふつさせる。そんなガレルの美しさが、本作での「白黒」の世界で、際立っている。

この人(ガレル)は、神様から「好きにしなさい。お前は好きにするがいい」と許可を受けたかのように、世の女たちを狂わせる。ほかの誰にも許さないけど、ガレルには何をしてもいい、という許可証を神様は渡したに違いない。こんな目をして、こんな歩き方をして、こんなしぐさで世の中をうろうろされたら、「被害者」は増えるばかりだ。ガレルに、気持ち的には、殺されてしまった女性はごろごろいるに違いない。彼の魅力に打ちのめされて、ただ、床をのたうちまわって息をひきとりそうになる感覚。どうか殺さないで、ガレルよ。その視線で、私を殺さないで・・・

女を狂わせるガレルが、わがままに、自分勝手に、女を地獄に落とすフランソワを演じる。彼はカメラマンだ。女優のキャロルの撮影をするために、彼女のアパルトマンを訪れる。人妻のキャロルと、美しいフランソワは、ほどなく恋愛関係を持つが、あっという間に始まった恋はあっと言う間に終わる。愛がなくては生きていけないキャロルは生きるのを、やめてしまう。

時間がたって、キャロル(炎のような女。太地喜和子系)とは正反対のタイプの「あっさり女」と付き合うようになり、彼女が妊娠。フランソワの人生は、はたして「あっさりとした幸せ」に向かうのか・・・

本作の監督はルイ・ガレルのお父さんのフィリップ・ガレル。自分の息子をここまで絵のように美しく撮るなんて・・・驚異的だ。ちなみに、白黒の画面の中、時代がわかりづらい服装(トラディショナルなスタイルのジャケットやシャツ)の登場人物、なおかつ携帯電話を使用する人は誰もいない・・・ということで、てっきり「60年代の悩める若者たち」を描いているのかと思っていたら、作品の途中で「ある人」の墓標のアップになるときに、この映画の舞台が現代であることを知り、衝撃的だった。白黒のパリ。白黒の画面の巻き毛の若い男。現代を描きつつも、普遍的なイッシューである「愛する人と幸せに過ごし続けることの困難さ」を美しく語っている。

同じく「親子・家族」がコラボしている作品「ゲルマニウムの夜」を見た。監督は「まほろ」の大森立嗣氏。彼の父親の麿赤兒氏と、弟の南朋氏がうまく絡み合っている。「この家族すげえな!濃い!」と感動。

主演の新井浩文、役の幅が広いな~。本当に、こういう人をversatile というのだろう。「ジョゼ虎」のときに、池脇千鶴ちゃんにこれでもか、という「愛のこもった悪態」をついていた新井。そして、「モテキ!」では意外にポップな役もこなす新井。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」では、見るものを本気で「あんたみたいな人、大嫌いだ!」と思わせる役を気持ちよさそうに演じた新井。そして、本作では、石橋蓮司演じる神父の性欲処理、鶏小屋の糞掃除、若き犠牲者少年の精神を救う「よきお兄さん」、などなど、これまたいろいろな顔を見せる「朧(ろう)」という青年を、すごい目で演じる。この人の目、本当に、いい。新井浩文が主役の映画が今後もっともっと見たい。誰にも演じることのできない、難しい役を演じる新井を、どんどん見たい。

本作の中で、山本政志演じる修道士が出てくるシーン(あまり多くはないが、重要ポイントに出てくる)が好きだ。この人と朧との会話のシーンは、悲惨なことが多いストーリーの中で、気持ち的に救われる。どんな地獄の中にも、こういう天使のような人はいるものだ。山本政志が天使のような風貌をしているわけではないが、明らかに、朧にとっては掃き溜めに鶴的存在だ、この修道士は。

ちなみに山本政志氏は映画監督であるが、この方の「ロビンソンの庭」というとんでもなくすごい映画がある。大学のときに大阪で見た。1987年。そのとき、「町蔵すごいなあああ!」と感動したが、そんな町蔵も今では芥川賞作家だ。

圭子

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