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2012年8月20日 (月)

「グッド・ガール」-監獄生活のような人生に、ようこそ-

アメリカの恋人、ジェニファー・アニストン。本作では珍しく、「田舎でくすぶった生活をしているぶかぶかジーンズをはいた主婦」を演じている。今まで見たことのないジェニファー。今までで一番の演技力を見せる。

ジャスティン(ジェニファー・アニストン)はディスカウントストアで働く30歳。客はほとんどいない。田舎町の店だ。夫のフィルはペンキ塗り。いつも同僚のババと仕事の後汚いシャツのままソファーでビールを飲むか、マリファナでぶっ飛んでいる。ジャスティンは自分の存在している環境を「監獄」のように思っている。望みのない日々の中、ベッドの中でいつもすやすや眠っているフィル。彼に背を向けて眠るジャスティン。

「ドニー・ダーコ」のころのジェイク・ジレンホールが、ここでも普通でない人を猛烈な存在感で演じる。ホールデン(本名「トム」)は、最初から「負」の匂いをぷんぷんさせている。ここでのジェイクは王子様のようなきれいな魅力ではなく、不気味な、それでも目を離せない、不思議な魅力を醸し出している。そして、「不幸」のオーラを大量に出している。小説を書き、自分に「ライ麦畑」の主人公の名前をつけている。職場の誰とも(ジャスティン以外とは)話さず、家庭では両親に存在を無視されている。ジャスティンのように、「一番身近な夫が一番自分を理解していない」という孤独感で、自分は死刑囚の監獄で生きていると自覚しているような人間にとって、これほど魅力的な相手はいない。

本作でのホールデンは、最初は大きな目をくりくりさせていて、「守ってあげたい」キャラだが、次第にそんなくりくりした目にも狂気の要素が混じってきて・・・ジェイク、こういう役本当に上手。松山ケンイチがやってもおもしろいかもしれない、ホールデン役。

このままテキサスの田舎で「囚人人生」を送り続けるのか、と半ば人生諦めていたジャスティンにとって、ホールデンはsaver of the universe になる運命だったのだ。二人は、予想を裏切らず、心と体を通わせるようになる。

この映画の中のすべての人は、望みのない世界で、なんとかしてそれを紛らわしている。夫のフィルだって、地味な人生をマリファナで紛らわして生きている。多くを望まず、このまま終わりまで乗り切ろうとしている。聖書勉強会を主催しているコーニー。彼は店の警備員だ。仕事を楽しんでいるとは思えない。暇な店で警備員が必要となる事件は起こらない。店の中の売り物のテレビを見て時間を潰す。店のアナウンスでとんでもないことを言ったり、レジで客に「サンキュー」の代わりに「ファックユー」とさりげなく言うシェリル(ズーイー・デシャネル!)。化粧品売り場に異動させられて、客にお化けのようなメイクをして憂さを晴らす。いつも不機嫌な顔。店の店長も、地獄の住人だ。彼が映画終盤でジャスティンに言うセリフ、「You're a good girl.」。これは、映画のタイトルにつながる。「この、『平凡』で『安定』している、何も刺激のない世界にようこそ。」彼はそう言っているように聞こえる。店長も、本当は、人生を劇的に変えたいのかもしれない。閑散とした田舎のディスカウントストアの店長ではなく、もっと刺激的な人生を歩みたいのかもしれない。そして、そんなこと、もう無理だ、ということも痛いほどわかっているのかもしれない。

平凡な安定した人生の中、気を抜くと、配偶者のことを「頭で考えることのできないブタ」呼ばわりするような生き方になってしまう。ジャスティンは私たちなのだ。ブタを捨て、人生を180度変え、羽ばたきたいが、羽ばたいた先の世界が天国とも限らないことも、私たちは知っている。本当のわずかな人しか、道を外さないだろう。「テルマ&ルイーズ」のように崖から猛スピードで車で空を飛ぶ人も、わずかだろう。私たちのほとんどは、交差点で一瞬のうちに、「正しい」道を選択する。しかし、それが正しい道なのか、地獄への道なのか、生きてみないとわからない。生きていきながら、確認するしかないのだ。

ジャスティンの罪のない夫フィルを演じるのがジョン・C・ライリーなのだが、こういう俳優は、本当に、ニーズがあるだろうな、と思う。人の世を描く様々な映画で、平凡な、多くを望まず、ビール飲んで人生を紛らわせているうだつの上がらない男は、スーパーヒーローに変身して世界を救う役よりも、500倍くらい多いからだ。世の中がジョン・C・ライリーに演じてもらわないといけない役で一杯だ。順風満帆。そして、同僚ババ(なんちゅう名前やねん)役のティム・ブレイク・ネルソンという俳優、この映画の中ではかなり気持ち悪いタイプの役であるが、俳優自体は名門ブラウン大を出て、ジュリアードでも学んだとのこと。すごい。しかし本作では気味悪いマリファナぶっ飛び男。こういう役も、ニーズが多いと思うので、やったね!ティム・ブレイク・ネルソン。今後も仕事、たくさん舞い込むぞ!

圭子

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