« 蕎麦ディナー | トップページ | アボカド&エビドリアでディナー »

2012年8月 1日 (水)

「恋の罪」-ふわふわと渋谷の街を浮遊する小林竜樹-

「恋の罪」はそれぞれの俳優の実力がものをいう作品だ。

話の内容(「東電OL殺人事件」をゆるやかにベースにしている、堕ちていく女の物語)そのものは、同じ園作品でも、「ヒミズ」や「愛のむきだし」や「冷たい熱帯魚」の方に惹かれる。「恋の罪」は、内容的には共感する部分がやや少ない、私にとっては。(キャラクターに強く惹かれたのは美津子の母親役だ。大方斐紗子が狂った母親を上手に演じている。)

「水野美紀がオールヌード」(①)だとか、「東電OL殺人事件がベース」(②)だとか、前情報があったもので、先入観を持ちつつ見始めたのだが、①に関しては、かなり短い時間しか全裸の場面はない。この冒頭シーンのヌードは、水野(演じる刑事)の「愛欲にまみれた不倫をしている夫も子供もいる家庭人」という設定を示すために必要な要素なのだろうが、彼女の「セックスにおぼれた状態」を示すのなら、実際のセックスシーンも、もう少し多目にあったらもっとよかったなああ。(それにしても水野の不倫の相手役が、かなり意外な役者!!)

②に関しては、実際の事件の被害者を「モデル」にしている役が劇中にあるわけで、実際の「事件」を下敷きにしているわけではない。この、「東電OL殺人事件の被害者をモデルにした役」である美津子を演じる富樫真が、すごい。男みたいですごい。狂気に満ちていて、本当にすごい。あっぱれな力量。見る者が地獄までついていきたくなるようなカリスマ性を持っている。普通の役をしたら浮いてしまいそうな女優だ。

ところで、渋谷の街を、まるでふわふわ浮いたような雰囲気で闊歩する謎の男「カオル」役の小林竜樹に関しては、この映画から得た大収穫の一つだ。「時計じかけのオレンジ」のアレックスのような帽子。そして本当に不気味な満面の笑み。村上龍の「インザ・ミソスープ」の表紙を思い出した、急に。

そして、そして・・・三人の主演女優たちの陰毛の恰好がみんな「海苔」みたいで、これがそろいもそろってそうなので、監督の園子温氏の指示か?!とも感じたり。

一番の驚きはマーラー流れる中の哀愁漂う放尿場面!もうこれだけで私は神楽坂恵に一生ついていく決意を固めた!(「卍」の樋口さんの放尿シーンもよかったが、この「平成の大放尿」はお見事としか言えない。)このあたりのシーンは「ベニスに死す」の匂いをぷんぷんさせる。男にぼこぼこにされ、鼻血を流しながらも恍惚と空を見上げる神楽坂嬢には、黒い汗を流しながら死ぬアッシェンバッハの匂いを感じた。

嵐のような勢いがある作品だ。それぞれの役者が光り輝き過ぎ、全体像をつかみづらかったが、私なりに受け取った本作のメッセージは「人は、地獄まで堕ちないと自分を照らすことができない」ということだった。スーパーの試食売り場でウィンナーを売る神楽坂嬢は、セックスの虜になったとたんに生き生きして、ウィンナーを客に勧める声すら元気印になったものだ。そして、挙句の果てにはさびれた町で5千円で体を売るようになる。蹴られても、決してふさいだ顔は見せない、地獄の花になって。

圭子

|

« 蕎麦ディナー | トップページ | アボカド&エビドリアでディナー »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「恋の罪」-ふわふわと渋谷の街を浮遊する小林竜樹-:

« 蕎麦ディナー | トップページ | アボカド&エビドリアでディナー »