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2012年11月20日 (火)

「サブウェイ」-無邪気な笑顔、パッパラパッパ・・・(涙)-

1985年作品。ああ、この映画を何度VHS でレンタルして見たことか。21世紀の今、美しいデジタル・レストア・バージョンのブルーレイで久方ぶりに拝見した。

なんなんだ、この、「いつ見ても輝いている」感!(80年代の)リュック・ベッソン、万歳。

美しいブルジョワ夫人エレナ(夢のように美しいアジャーニ)はフレッド(金髪で笑顔が子供のようなクリストフ・ランベール)をパーティに招く。そこで金庫を爆破して中にある書類を盗み出したフレッド。(理由は、「金庫が嫌い」だから。)その書類を取り返すためにフレッドと地下鉄で会うエレナと、フレッドを捕らえようとするエレナの旦那(富豪)の手下たち。映画の冒頭は、パーティから抜け出したフレッドやその追手たちがタキシードを着たままなので、非日常の匂いがぷんぷんしている。そして、同じくパーティから直行してきて書類を取り返そうとフレッドに会うエレナもまた、フォーマルドレスのまま。彼女が劇中に登場するシーンは、階段をかつかつと降りてくるアジャーニの脚、胴体、顔、と順番に見えてきて、アジャーニだとわかるときに「ひええええ、きれいいい!」と見る者を唸らせる。ここでフレッドがエレナの目を見て言うセリフ「着飾った君はきれいだ」のシーンは、何度見てもこの映画の中の(私の)ベストシーンだ。

話の内容は、単純である。エレナの旦那の追手から逃げるフレッドは、パリのメトロの地下に潜りこむ。(そう、映画の中身の大半は地下鉄の駅の中でのシーンなのだ!なので、タイトルは「サブウェイ」。)メトロには、そこに住み込んでいる不思議な人々がたくさんいる。ローラースケートですいすい自由自在に移動するジャン=ユーグ・アングラード(少年のよう!)や、花屋(ホームで小さな花束を売る)のリシャール・ボーランジェ、ドラムスティックを常に持っているジャン・レノ。彼らとの奇妙な生活の中、バンドメンバーを集めてメトロでのコンサートを企画するフレッド。バンドの演奏する音楽もとびきりいかす。

地下鉄の駅内の暗闇を蛍光灯を持って歩くシーンがある。このシーンでのフレッドが、80年代当時のレンタルビデオのジャケットの写真に使われていた。光る蛍光灯をライトセーバーさながらに持って立つフレッドの写真は、SF 映画を思わせる雰囲気だった。しかし、映画はSF どころか、とても古典的で、登場人物たちはやたらコーヒーを飲みたがり(ああ、フランス人たちよ!)、男は女に愛を語り、警察官は「ルパン3世」の銭形警部みたいなコートを羽織っている。

フランス映画の独特な雰囲気。それを一言でまとめるのは難しいが、一つのポイントは「登場人物たちに人生を楽しむ余裕がある」という点だと思う。たとえば、本作でも、追手から逃れて生きる状態とも思えない雰囲気をフレッドは醸し出している。地下鉄の中の迷路のような区域で楽しげに生活し、ときにはホームのバーにおいてあるシャンパンを豪快にあける。盗んだエレナの幼いころの写真を見てはにんまりして「これ、俺の女房なんだ。」と子供のように笑う。警察たちものんきだ。仕事はほどほどに、それよりも、おいしいコーヒーの方が大事そうな雰囲気。目の前のことに精いっぱいで、生活を楽しむ余裕なんて一ミリもない日本人(というか、筆者自身)にとって、このまったりした雰囲気がフランス映画の醍醐味なのだ。

この時代(80年代)、よいフランス映画が日本でがんがん公開されていて、とても幸運だった。いわゆるフランス映画ブームの時代で、本作や、レオス・カラックス作品、ジャン=ジャック・ベネックス作品を体験することができた。そういう時代に青春時代がすごせて、よかった、本当に。

子供のころ事故にあって以来、歌を歌えなくなったフレッドは、メトロ構内で念願のロックコンサートを開く。バンドが大盛況の中、無邪気な笑顔でフレッドは音程の外れた声で「パッパラパッパ・・・」とつぶやくように歌う。大好きなエレナにまた会えて、幸せいっぱいのフレッドが、小さく、誰にも聞こえないような声で、歌う。

圭子

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