« 正月2日目!まったり朝ごはん | トップページ | 時間があるといろいろ食べてしまう・・・ディナー »

2013年1月 2日 (水)

「ゴーストライター」、そして「おとなのけんか」-新春ポランスキー祭-

いろいろな映画の予告編を見ている時、ユアン・マクレガーの紹介時に「代表作」としてよく、「ゴーストライター」と書かれているとき、ずっと「ユアンと言えば、『スター・ウォーズ』のオビ=ワン、とか、もっとさかのぼれば『トレインスポッティング』とした方がわかりやすいのでは?」と思っていたのだが、本作を見て、これこそユアンの代表作としてまっとうだ、と感じた。「ゴーストライター」でのユアン・マクレガーのどんどんヤバい状況に陥っていく姿の丁寧な演じ方に、この人は幅の広い役者になったものだ、と感激した。

元英国首相のアダム・ラングの自叙伝の「二代目」ゴーストライターとして雇われた「ゴースト」。そう。ユアンの役柄には名前がない。劇中でも名前で呼ばれることもなく、自らも「ゴースト」と名乗る。一代目のゴーストライターは不思議な死に方をし、急きょ原稿を仕上げる役目を引き受けることになる。ラングの過去を探っていくうちに、危険な政治の闇に飲み込まれていくゴースト。

執筆作業用の、アメリカでの元首相の別荘のシーンも、ポランスキーの過去の事件の事情で、アメリカではロケしていない。ドイツで撮影しているそうだ。昔仕事でマサチューセッツのMarblehead に行ったことがあるが、映画を見ていて、そのエリアの雰囲気に似ているなと強く感じた。ポランスキーはドイツのある島をマーサズ・ヴィニヤードのそれと似たような感じにするため、木造の家を加えたり、アメリカ車を走らせたり、と工夫したらしい。なおかつ、ラングの別荘そのものはスタジオのセットであり、窓からの景色はグリーンスクリーンによる、とのこと。(参照:http://www.imdb.com/title/tt1139328/trivia )

とにかく、かなり手間がかかっている。全ては、1977年の幼女に対する性的行為による有罪判決の影響であろう。普通に映画を撮影することができないポランスキー。それでも精力的に撮り続けるポランスキー。今年は80歳になる彼だが、どうかどうか、いつまでも元気でいてください。あなたの作品、面白過ぎるから!!!

アダム・ラング(ピアース・ブロスナンがいい感じ!)の秘書役の不必要なまでに色っぽい尻をした女優が、どこかで見た感じが強く、調べると、「セックス・アンド・ザ・シティ」のサマンサ役の人だった。色っぽ過ぎる秘書に乾杯。そして、ラングの妻の勝ち気で知的な女ルースを演じるのが、オリヴィア・ウィリアムズという女優なのだが、この人が、時々見る角度によってはエリザベス・ハーレーにも見えることがあった。ルース役を演じている際、映画の中でものすごく気取ったイギリス英語(上の方のクラスの人が話すようなタイプ)のときもあれば、少しきたないタイプの英語のシーンもあった。(前任のゴーストライターの不審死を調べて島の海岸をうろうろしていたユアンを見つけに来たときのルースのしゃべり方は下町風英語だったように聞こえる。)この、英語のレベルの不安定さには何か意味があるのか、単なるミスなのか・・・ これは、なぞ。

劇中、ほぼ終盤になり、いろいろな重要事項がユアンがちょちょっとgoogle で検索しているうちに判明し「ええええ!!?google かい!?」と衝撃を受けるシーンがある。CIA の結構重要な情報に関しても数分ちょこちょこリンクを飛んで飛んでいっていくと分かったりして、「いやいや、そんなに簡単に判明しないって!」と突っ込みを入れたくなる場面もあり、これも、なぞ。

もう一つのポランスキー作品は、これまた珍しいコメディー「おとなのけんか」(この邦題、大成功!)。コメディーとは言え、本作もまた、「舞台はニューヨーク、撮影はパリ」という困難な道を歩いているポランスキー。アメリカで普通に撮影させてあげたい・・・

ほぼ、密室劇の本作はもともと戯曲。息子同士の喧嘩により、被害者の親と加害者の親が最初は丸くおさまりそうな会話をしているうちに大混乱になり、あげくの果てには暴言ははくは、本音は吹き出てくるは・・・ もうすでに「おとな」ではなく、言いたい放題を言い合う悪がきの喧嘩のようになっていく。

演者全員がうまい。最初は偽善的な「丸顔のやさしい金物屋さん」ジョン・C・ライリーも最終的には妻に批判的なことばをぶつける悪人に。ジョディーも、アフリカの貧困には心を寄せているが、実際はストレスのたまりまくった眉間にしわよせたおばはんに大変身。携帯電話を四六時中離せない周りを不快にする弁護士を本当に嫌味に演じるクリストフ・ヴァルツ。上品そうな面の皮を一皮むけば、マーライオンのようにゲロを勢いよく吐き出すブローカー女、ケイト・ウィンスレット。全員のケミストリーが溶け合い、美しくインテリな雰囲気のニューヨークのアパートは、恐怖の戦場のような世界へ!

ポランスキーって、すごい。母親がアウシュビッツで殺され、自分も妻が妊娠中にカルト教団に惨殺され、「テス」のように、美しくも悲惨な映画を撮る同じ人が、こんなに、涙がとまらないほど馬鹿笑いさせてくれるような映画を作るなんて・・・ いろいろな目にあった人にしか撮れない映画をこれからもどんどん、どんどん作ってください。師匠!

圭子

|

« 正月2日目!まったり朝ごはん | トップページ | 時間があるといろいろ食べてしまう・・・ディナー »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ゴーストライター」、そして「おとなのけんか」-新春ポランスキー祭-:

« 正月2日目!まったり朝ごはん | トップページ | 時間があるといろいろ食べてしまう・・・ディナー »