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2013年2月12日 (火)

「ムーンライズ・キングダム」-こういう世界が必要なんだ。-

例えば、普通に育った人。例えば、マジョリティーの世界に属する人。そういう人はこの主人公の12歳のカップルを見ても「変わってんな。」くらいにしか思わないだろう。ましてや、この二人が最終的に幸せに生きている姿を見ても、まあ、泣きはしないだろうな。でも、私は「こういう世界」が必要な人間なので、エンドロールでいろいろな楽器が紹介されながら登場するあの曲を聴きながら、あああ、二人に生きる世界があって本当によかった、と心の奥から感じた。

「こういう世界」とは、マジョリティーではない人が生きるスペースだ。親が自分のことを「異常」だと警戒している環境で生きる少女スージー。そして、本当の親は亡くなっていて、里親に育てられつつも、その里親に必要とされていない、行き場のないサム。出会うべくして出会った二人は恋に落ち、駆け落ちをする。

まわりの大人たちは必死で彼らを探しだし、引き裂こうとまでする。しかし、サムのボーイスカウト仲間たちの素晴らしいチームワークのおかげで、二人は(法的ではないにしても)結婚までこぎつけることができる。

若い二人は、これからはゆっくりと幸せをかみしめていくんだろうな、という心地いい予感の中で映画は平和に終わる。ああ、マイノリティー王国(キングダム)のプリンスとプリンセスよ!あなたたちの将来に幸あれ!

脇を固める大人たちの豪華なこと。あまりうまくいっていない夫婦(スージーの親)をビル・マーレイとフランシス・マクドーマンドが独特の雰囲気で演じる。サムが逃げ出したボーイスカウトの長を演じるのはエドワード・ノートン。気弱そうだが、やるときはやる、というナイスなキャラクターを好演。最終的にサムを窮地から救うのはシャープ警部ことブルース・ウィリス。(あんたがいて、ほんとによかったよ!)そして、里親からも見放されたサムの今後についてやいのやいの騒ぐ福祉のおばさんを冷血に演じるティルダ・スウィントン。ああ、めまいがするほどのキャストだ。

こういう映画が必要な人にとっては、たまらない映画だ。スーパーヒーローが世界を救ったり、エリートビジネスマンがいい女と南の島で楽しいバカンスを過ごしたり、優しいお母さんと素直な子供が仲良く笑いあったり、そういう映画ばかりだと、「居場所のなさ」を感じてしまう。(本作前半のサムやスージーのように。)でも、世界の端っこの方に居心地悪そうに存在する愛らしい人たちに光を当ててくれると、まるで、「お前も大丈夫だよ。」と言われたような気分になる。だから、こういう映画はたまに見ると、勇気が出てくるんだよね。そして、世界が何センチか大きくなったような感覚になる。

ああ、こういう映画が自分の親くらいの年齢の人が作ったのなら素直に「ありがとうございます。」と言えるんだが、なんてこったい。ウェス・アンダーソンよ。あなたは私の一学年下だよ。ちきしょう。年下だったのかよ!自分より年下のやつに気持ちのいい涙を流させられて、ちょっと悔しくなる、というおつりつきの映画だ。

圭子

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