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2013年5月27日 (月)

「遥かな町へ」-親にも親なりの苦悩はある-

自分の年齢よりも若いときの親の写真を見ると、不思議な気分になる。親は常に年寄なのではない。親にも、20代の頃もあり、30代の頃もあったであろうに、その姿は実際には見たこともないし、記憶にも残っていない。

もし、タイムマシンに乗って過去の世界に戻り、今の自分よりも若いころの親を見たら、どういう気分になるだろう。この映画を見ていると、それが疑似体験できる。

主人公トマは中年の漫画家だ。(ちなみにこの映画は日本の「漫画」が原作になっている。)漫画のイベントへの参加のために遠くへ行き、パリに帰る途中で電車を乗り間違え、なぜか自分の生まれ故郷に行ってしまう。そこで、タイムトリップして14歳のころの自分に戻ってしまう。

14歳の自分に「外見」は戻るが、頭の中は中年の「今」のまま。トマは、自分の現在の年齢よりも若いころの親に会い、そして自分の現在の年齢よりも若い学校の先生と接する。幼馴染たちを見ても「すごい!みんな若い!」と驚き、現在の世界では疎遠になっているのだろうか、妹には一生懸命埋め合わせをするかのように、優しく接する。

トマは、ずっと自分の父親がある日突然失踪してしまったことを心の闇に抱えていた。今回14歳のころ(そう、父親が失踪した年だ。)に戻ったので、なんとかその悪夢を食い止めようとする。はたして過去は「修正」できるのか。トマの努力を私たちは祈りながら見ることになる。

子供のころ、親の悩みや苦労などは見えなかった。あるのは親に対する批判と反抗だけで、決して「共感」はなかった。しかし、考えてみれば、私が10代だったとき、親は今の私と同じくらいの年齢だったのだ。子供のとき、「40代半ば」の人なんて、悩みなんかあるわけない、と思っていた。自分の「青春」の悩みで精いっぱいで、親は「もう大人だし、いいな、のんきで。」と思っていたのだ。

しかし、自分が40代になり、それが全く誤解であったことに気づく。いまだに毎日を悩みの中で暮らし、闇は晴れそうにもない気分だ。もし自分より若い人間が「いいですね、大人だから、悩みなんてないでしょ?」などと言ってきたら、腹が立ってののしるだろう。「何を言う?いつまでたったって、人間は変わらない。君と同じように、私も激しく悩んでいるよ。」と。

トマは中年の頭で、自分よりも若い、苦悩する父親を改めて知ることになる。そのとき、きっとこう思うのだろう。「お父さん、あなたの気持ちはよくわかる。本当に、生きるのは、つらい戦いだよね。」と。

きっと子供がいる人がこの映画を見ると、より主人公の気分が理解できるのであろう。私は、子供はいないから、想像でしかないけれど、もし自分に子供がいて、子供が自分の苦悩を理解してくれなかったら、とても孤独感を感じるだろうし、逆に、自分の苦しみを理解してくれたら、本当に救われるんだろうな、と思う。親も親なりに、いろいろと悩みながら生きているんだ、ということが理解でき、この映画に感謝する。

圭子

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