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2014年5月19日 (月)

「ウィズネイルと僕」-さようならバウスシアター、さようなら世渡り下手なウィズネイル-

もうじき閉館になる吉祥寺バウスシアターで「ウィズネイルと僕」を見た。映画館で見るのは約20年ぶりであり、字幕付きで見たのは初めてだ。

以前このブログでも本作の感想を書いたが、今回映画館で改めて見て、以前とは少し違った気持ちになった。そういうわけで、もう一度感じたことを書いてみようと思う。

以前の感想のリンクです。

バウスシアターを出るときに強く感じたのは「悲しさ」だった。スクリーンの中のウィズネイルの後ろ姿が小さく小さくなるまで、じっと見つめた。後ろ姿のウィズネイルが雨の公園の中でどんどん私達から遠くに行ってしまい、寂しい音楽で映画は終わる。

ずっと昔にこの映画を見ていた時は、ここまで悲しい気分にはならなかった。今回は、この後(シャトー・マルゴーをらっぱ飲みしながら公園を歩き、その後きっとパブで酔いつぶれるか、それともお金がないから汚いフラットに戻り、暖房もない寒さの中、いつものように部屋の中でもコートを着て、ライターのアルコールでも飲むのか・・・)ウィズネイルがどうなるかまで考えた。この後のウィズネイル。明日も、あさっても、自分を満足させる役にありつくことがない。部屋は寒く、いつのまにか30歳を超え、40歳も超え・・・

若い頃は、この映画のコミカルな部分(きったない台所のシンク。変なしゃべり方のダニー。銃でバンバン川を撃ちながら、魚を得ようとするウィズネイル。モンティーの強烈さ。etc.)ばかり目についていたが、自分自身が40代も後半にさしかかり、「何にでもなれる。」と思っていた時代から、「あれ?何にもなれないのか?」となり、次第に、「仕方ない。理想ばかりを追い求めても苦しい。できる範囲で生きるしかないな。」とある意味妥協をして(まるで、「かもめ」の主役の代役を受け入れるような?)生きるフェーズにさしかかり、そうなると、悲しい部分がより強くフォーカスされてくるのだ。

初めてこの映画を見たときは、20代後半で、いわゆる、劇中のウィズネイルのような時期だった。もうじき30歳だというのに、靴底がはずれたブーツを履いているウィズネイル。私は「普通」だったら責任のある仕事をしていてもいい年齢だったのに、当時は親のすねをかじって学生をしていた。このままでは終われない。どんでん返しして目にもの見せてやる(誰に?)。そんな気分でいたので、ペンリスの丘の上で「スターになってやるどおおおお!!」とウィズネイルが雄たけびをあげるシーンではいつも「そうだ!そうだ!」と共感していた。

自分が大人になり、なかなか若い頃思い描いていたようには人生が進まないことに気づくにつれ、この映画の「しんどい」面も理解できるようになる。ウィズネイルはたばこの吸い方も、フォークの持ち方も、パブでの酒の注文の仕方も、何もかもカッコいい。しかし、世渡りが下手だ。「僕」はおどおどしているようだが、実は、したたかな面もある。

以下に、今回本作を見て感じた、ウィズネイルと「僕」の処世術の差をまとめた。

Withnail
4の「farmer とのネゴシエーション」に関しては、暖炉用の薪や、食料の補助に関し、田舎の農家のおじさんに頼む場面のことだ。ウィズネイルが何か言うたびに「僕」は「お前は黙っとけ!」と制する。

5の「人の不幸は蜜の味」に関しては、ペンリスからロンドンのマネージャーのところに公衆電話からコンタクトをとるウィズネイルと、そんな彼に小銭を貸してあげる「僕」のシーンだ。電話のやり取りで、どうもウィズネイルの仕事の雲行きが怪しいことを感じる「僕」。ウィズネイルが役者としてうまくいっていないことを感じ取る彼の口元をよく見ると、ほんの少しだが、にやっと笑っている。この皮肉な「にやり」は、映画の終わりの方で「僕」の方にいい役が回ってきた時に寂しそうではあるが精いっぱいの「おめでとう」を言うウィズネイルのかすかな微笑みとは似ても似つかないものだった。

現在の自分の年齢よりはるかに若いウィズネイルと「僕」。彼らの「素晴らしい田舎での休日」に付き合い、そして、髪を短く切って新天地に向かう「僕」や寂しく公園を立ち去るウィズネイルの後ろ姿を見つめ、まるで20代のころの自分に再会し、そして、別れを告げたような気分になる。輝いている青春に、2度と戻ることのできない場所まで来てしまった自分が再会するので、最後のシーンが一層悲しくなる。それにしても、何度見ても、狼相手にハムレットを演じるリチャード・E・グラントの神々しいこと。ああ!誰かウィズネイルに仕事をやってくれ!頼むから!!

愛さずにはいられない映画だ。こんな映画をクロージングで上映してくださったバウスシアターに心から感謝したい。さようなら、わが青春のウィズネイル。さようなら、伝説の映画館、バウスシアター。

圭子

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