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2014年5月12日 (月)

「悪の法則」-悪はますます栄え、美徳は首を落とされる-

(ネタバレをしております。)

「どうしてこんなことになったんだろう。」と人生に疑問を持つことはたびたびある。しかし、何でも、過去のある時点での自分の(愚かな)決断や選択が原因となっている。ほかでもない自分の人生、誰のせいにもできないものだ。この作品は、そんな、できれば目を背けたい事実を描いた物語だ。

映画のオリジナルのタイトルは「The Counselor」。「弁護士」の意味だ。マイケル・ファスベンダー演じる弁護士には役名がない。人は彼を「カウンセラー」と呼ぶ。 名前すら説明されない役柄が主人公だ。この無名な人物を中心に置く演出で、誰にでも本作の「弁護士さん」のように、些細な選択のミスで人生を転落する可能性があることを意味していると私は感じた。

「弁護士さん」は美しい恋人にプロポーズをし、受け入れられ、人生の絶頂だ。プロポーズでは目が飛び出るほどのサイズのダイヤが輝く。受け取る恋人ローラ(ペネロペ・クルス)の瞳も負けないくらい輝く。将来が明るい弁護士さんは、非の打ち所のない恋人と、染みひとつない人生を歩もうとしている。

しかし、弁護士さんの人生は、彼の軽はずみな選択からあれよあれよという間に崩れてゆく。文字通り、何もかもを失う羽目になる。

弁護士さんの選択ミスは、決して突拍子もないことではない。恋人へのダイヤにお金がかかった彼は、おいしい話に軽く乗ってしまっただけだ。 誰でも犯すであろう簡単なミス。おいしい話にのっかって、恐ろしいメキシコの麻薬カルテルに関わる羽目になる弁護士さん。そんな彼を誰も笑うことはできない。誰だって、後にならないと、今選んでいる選択肢が正しいのか間違っているのかはわからないものだ。「もっとよく考えて買えばよかった。」と、絶対着ることのない派手なブラウスを悔しく見つめるくらいならよいのだが、自分の失敗で最愛の恋人と二度と会えなくなってしまった弁護士さんの後悔は、その非では、ない。

「悪の法則」を上手に使って最後に笑うマルキナ。キャメロン・ディアスは「メリーに首ったけ」で髪に精液をつけて愛らしく笑っていたが、本作では、般若のような顔だ。実に、はまり役。今後はこのような身もふたもない悪女、という新しいタイプの役もどんどん演じていっていただきたい。本当に、鬼のようだった、キャメロン・ディアス。(そんな悪人マルキナになぜか首ったけのライナー(ハビエル・バルデム)。「悪の法則」の宣伝ポスターなどからは恐ろしいタイプの男かと思っていたが、実際は単なる飲み屋経営の派手なチンピラ的キャラで、むしろ愛らしい。)

天使のように優しく、信心深いローラと、人の死など屁とも思わない悪人マルキナ。この二人の対比を見ていて、サドの「美徳の不幸」と「悪徳の栄え」を思い出した。信仰厚く、美徳を重んじるにもかかわらず不幸に陥れられるジュスティーヌと、悪の道を意気揚々と生きる極悪人のジュリエット。ああ、マルキナよ、あなたはもう、普通の人には戻れない・・・

ところで、本作の最高にクールなシーン。きりきりと首がちぎられる最中に「笑う」ウェストリーだ。出演時間は決して長くないブラッド・ピットだが、この、死にかけているという緊急事態の中、笑う、怪演。ブラピあっぱれ!

圭子

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