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2017年2月 6日 (月)

「ボヴァリー夫人」-人生は、そう。救いようがないものなんだよ!!-

今、筑摩書房の「世界文学全集」で「ボヴァリー夫人」を読んでいる。眠れない夜に読むと、余計に眠れなくなる。ほぼ、死にたい気持ちになる。人生は、そう。救いようがないものなんだよ!!とフローベールがニヒルに笑いながら諭してくれるような、そんな気持ちになる。

映画「ボヴァリー夫人」のジャケットは、ミア・ワシコウスカ演じるエマと、エズラ・ミラー演じるレオンの濃厚なキスシーンが使用されているので、「閉鎖的社会に住む主婦が陥る不倫の世界」のようなイメージを見る者に与えるが、実際のところ、この「ボヴァリー夫人」という作品の底辺に流れるのは、「どの人生も、『ここにはないどこか』を求めているうちは、いつまでたっても不幸なのだ。」という教訓なのではないか、と私は思う。

平凡で面白みのない(しかし、決して妻を飢えさせたりはしない)夫、何もすることもない(しかし、家事は全てメイドがしてくれるので、楽な)日々。エマの周りには、川で寒い中洗濯したり、重い荷物を頭の上に乗せて運ぶ村人がたくさん生活している。生きるだけでも大変そうなそんな人からしたら、医師の妻として、綺麗なドレスを着て何不自由なく暮らしているエマは「幸福な人」だ。その当人は、自分を不幸のどん底だと嘆いている。毎日毎日変化のない日々を過ごす自分が不幸だと思っている。

これは、19世紀の田舎町の女性に限った物語ではない。どの時代も、現代の日本でも、同じなのだ。自分の置かれた状態を受け入れ、満足し、自分は幸せだと感じるのか、「ここにはないどこか」を常に望み、今置かれた環境を不幸だと感じるのか。自分の現状に満足することは、そんなに簡単なことではない。仏陀のように悟りの境地にいかないと、無理だろう。ほとんどの人間は「エマ」なのだ。私たちは、みな、「エマ」なのだ。だからこんなに時間がたっても、フローベールの「ボヴァリー夫人」は読み続けられているのであろう。今後も何度も「ボヴァリー夫人」は映画化されていくのであろう。

ミア・ワシコウスカの寂しげな、根本的な「不幸顔」がエマにぴったりだった。チャールズと結婚してすぐに「これは私が修道院時代に夢見てきたバラ色の結婚生活とは別物だ!」と感じ、勝手に不幸な気持ちに陥る。そんな状態では、村の名士で女の扱いに慣れた感じのマルキ(と字幕で訳されていたが、Marquis だとしたら、「侯爵」という意味では?)に簡単に堕ちてしまう。そして、すぐに飽きられてしまう。若く美しいレオンも、最初はエマの信奉者だったが、エマの方が熱い気持ちになっていくと、やはり、「鬱陶しい」という表情になっていく。しまいには、レオンにも捨てられる。

救いようのない話である。救いようがない形相で、まるでミレイの「オフィーリア」のように森の中でこの世と別れを告げるエマ。エマが砒素を飲んで一人でこの世を去っていることも知らず、エマの不幸な人生の傍観者だった夫チャールズや村人は松明を持って森を探し回るところでこの映画は終わる。

ああ、もしエマに打首獄門同好会の「フローネル」を聞かせてあげることができたら!!最近ものすごく落ち込むことがあり、本当に、砒素でもあればくいっと飲んでしまいたい、くらいの精神状態だったが、そのとき、友人から「これを聞いてみたまえ。」と紹介されたのが打首獄門同好会の曲「フローネル」だった。疲れたら温かい風呂に入り、休日には一度目が覚めてもまた布団にもどって二度寝する。こんな単純なことが、実は幸福なことなんだ、と改めて気づかせてくれるような、ある意味哲学的な曲だった。冗談抜きに、救われた、この曲に。劇中のエマは、今視野がかなり狭くなっていて(そりゃそうだろう、借金もかなりの額だ。)、にっちもさっちもいかない状態になっているが、少し視線を他にずらすと、十分「人生って悪くない。」と気づけていたはずだ。ほんの少しの工夫次第で砒素を食らって森で死ぬのか、劇中のオメーのように人生をうまくスムーズに生きていくのかの差が出る。ああ、エマよ。amazonで打首獄門同好会を買ってくれ・・・

ところで、この作品の中で、エマの忠実なメイド、アンリエット役を、「ダウントン・アビー」では「上階」のイーディスを演じているローラ・カーマイケルが演じていたことに驚いた。「下階」の地味な役も上手だった。

圭子

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