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2017年7月20日 (木)

私を「ワイルドマウンテン」に連れてって!!

この漫画に出会ってからもう久しい。何度も何度も読み返してしまう。「ワイルドマウンテン」。本秀康さんの作品だ。

ワイルドマウンテンとは、隕石が東京中野区に落ちてきてできた岩山の町。中野区ワイルドマウンテン町だ。町長は、この漫画の主人公、菅菅彦(すがすがひこ)。地球防衛軍の隊長だった伝説の男である!!

ほんわかとしたファンタジックな絵や、時折顔を見せる空想上のパンダや愛らしい幼児(淵野辺銀造!)の風貌によって、この漫画が「ほのぼのストーリー」と誤解されそうになるかもしれないが、ところがどっこい、この作品は、悲哀の男菅菅彦や、その他のキャラクターの「人生の中でぽっかり空いてしまった埋めることのできない深い穴」を描いている。深い穴を埋めるため、必死に生きるキャラクターたち。現実の人生を生きる読者たちも、それぞれの人生で「穴」を埋めようと苦悩している。だから、菅彦たちに共感し、そして、菅彦たちを愛してやまないのだ。私はそう感じる。

菅菅彦の穴は、自分の過去犯した失敗だ。業務上犯したその失敗の呪縛に、ひと時たりとも解放されない人生を過ごしている。ときに友人である町民の銀造と遊び、ときに、愛する元ジャズシンガー兼未亡人の「奥さん」と逢瀬を楽しんでも、常に過去の許されざる失敗の呪縛におびえている。

ワイルドマウンテンの生誕(隕石落下)により、家族を失った孤高の俳優渋谷さん。彼も一晩中数えられないほどのビール缶を空にし、外面は明るくクールだが、家では家族の遺影と妄想会話をするような生活だ。

ファンタジックな画風の中、それぞれの人間(そして、人間以外のキャラクターたちも)がもがき、それでも、つかのまの幸せの中を狂喜乱舞する。まさに、人生だ。この漫画は、人生そのものなのだ。うまくいかないときが人生の期間の中の大半だ。だからこそ、ほんのたまに起こる奇跡的な幸せ(見上げた空に虹がかかっているのを見つけるような)に、心から感動してしまう。人生は、悲しい。しかし、人生は、美しい。

私は全8巻のこの奇跡のような作品を、心が折れそうな夜にランダムに手に取って読む。ときに6、7巻の「香港編」で毛むくじゃらの宇宙人を愛で、ときに、3巻でハガレゴッドと菅彦の出会いのシーンを再確認する。どこをめくっても、愛でめまいがするような、そんな漫画だ。

読み終わったときに、ああ、もう2度とワイルドマウンテンには戻れないんだ、という恐ろしい悲しみに包まれ、そんなのは嫌なので、また第1巻に戻り、「いいとも」を見ている菅彦に会いに行く。私にはワイルドマウンテンの愛の呪縛から、逃れる日はきっと、来ないんだろう。

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圭子

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